【シナリオ制作の前に読んで!】個別ハンドアウトの役割と作成のコツ

 皆様、今日も楽しいTRPGライフをお過ごしでしょうか?

 おお、シナリオ執筆中なのですね。完成が楽しみです!
 ところでシナリオ執筆中、こんなことで悩んだことはありませんか?

  • 各PC向けハンドアウトって、どんなことを書けば良いんだろう?
  • 個別オープニングしたいけど、3つも4つもハンドアウト思いつかないよ! どうしよう?

 そう。
 一部のTRPGシステムでは標準搭載にもなっている個別ハンドアウト。
 PCの個性付もしやすく便利なのですが、基本的なことを押さえないと、上みたいな悩みが出てくることもありますよね。

 そんなわけで、今回はシナリオ作成歴25年のTRPGおじいちゃん・りょーさんが、

『個別ハンドアウトの役割と作成のコツ』

 について解説していきます。
 先にお伝えすると、個別ハンドアウトの大きな役割は以下の3つです。

  • 役割1:卓の”雰囲気”を補強する
  • 役割2:情報を事前に渡す
  • 役割3:話題をバラす

 ぜひ、最後まで読んでいってください。

さらっと前提

 前置きを長くしたくないので、このブログ記事での「個別ハンドアウト」とは何を指すか、さらっと書いておきます。以下のようなものです。

  • シナリオ制作者から、参加PCに与えたい設定・目的が書いてある文章
  • キャラクター作成前に公開されている
  • 複数種類があって、キャラクターを決める前にPLがやりたいハンドアウトを選択する

 それでは、この個別ハンドアウト。
 どんな役割があるのか? 順番に3つ、見ていきましょう。

役割その1:卓の”雰囲気”を補強する

 以前から何度かブログで取り上げているとおり、卓の”雰囲気”を伝えるのは、PL募集のとき何より大事になります。

 そして、参加するPCにオファーを出すハンドアウトは、よりシナリオの”雰囲気”を補強してくれます。

 たとえば、同じ「歌と変形ロボと三角関係」が卓の”雰囲気”だったとしても、

  • PC1:新型ロボのパイロットでPC2のライバル
  • PC2:新型ロボのパイロットでPC1のライバル
  • PC3:歌手AIの開発者、PC1・PC2は学生時代の友人

 これだと、ロボにかなりウェイトが乗ってきます。新型機同士の熱いバトルがシナリオのクライマックスになるでしょう。

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 一方で、

  • PC1:新人アイドルでPC3が好き
  • PC2:トップアイドルでPC3が好き
  • PC3:ロボパイロットのイケメン

 これだと、どちらかというと三角関係&歌にウェイトが乗ってきますね。
 それから変形ロボと続くシナリオになります。

 このように、ハンドアウト全体で卓の”雰囲気”を補強してくれるのが個別ハンドアウト……ではありますが。
 ここで1つ注意点。

 あくまで”補強”として使う、ということをオススメします。

 なぜか? 答えはシンプル。
 「長い」からです。

 丁寧に書いた個別ハンドアウトは、だいたい100字くらいになります。
 それが3-4個あると、約300字。人によっては、読み終わるのに1分くらいかかるでしょう。

 コンテンツが溢れ、TRPGの卓募集もたくさん立っている現代。
 「卓が自分向きか」を判断するのに、1分は長すぎます。

 そんなわけで、卓の”雰囲気”は20字前後の短いワードで先に伝えましょう。
 そして個別ハンドアウトは「なるほど。参加するか検討しよう」と思ってくれた人にだけ見せる。
 使い分けが肝要です。

役割その2:情報を事前に渡す

 以前に情報収集について解説したとき、情報項目の役割の1つが

「情報をバラして渡す」

 ことだと解説しました。

 ハンドアウトをうまく活用することで、シナリオ開始前に情報を渡し、グッとシナリオをスピーディにすることができます。

 例を挙げましょう。

HO1:

 あなたは刑事だ。和塁 阿久朗(わるい・あくろう)・17歳を追っている。

 和塁 阿久朗は自分が通っている高校を中心に、地域一帯の若者たちに危険ドラッグを売りつけている。あなたは執念深い捜査の末、ついに奴の販売拠点となっている倉庫を突き止めた。

 しかし、証拠が不十分であること、奴の父親が警察幹部であることから、同僚たちは検挙に積極的ではない。

 あなたは、一緒に現場に踏み込んでくれる誰かを探すことにした。

 セッション中、これだけの情報をPCに集めてもらうのはカナーリ大変です。
 集めるシナリオを作ったとして、「こんなに早く分かるの、逆に不自然じゃね?」「敵、バカじゃね?」みたいな雰囲気になる場合もあります。

 一方、例みたいな情報を渡しておけば、PCが合流さえすれば即、拠点踏みこみに進めますね。他の個別ハンドアウトも工夫すれば、「合流→即倉庫! 逮捕だー!」とできます。

 ほかにも、「調査結果を全部、HO1の手柄にできる」というメリットもあります。

 上の情報をセッション中に集めたとして、HO2の高校生が全部調べていたりしたら、わりと刑事さんカッコ悪くないでしょうか?
 個別ハンドアウトに書いておけば、当然ながら全部がHO1の手柄になるので安心ですね。

役割3:話題をバラす

 突然ですが。
 終盤でのボスの対面時、こんな状況になったことはありませんか?

ボス: ついにここに辿りついたか、PCた……

PC1(かぶり気味に): ついに見つけたぞボス! オレの大事な幼なじみを誘拐しやがって! 許さない!!

PC2(PC1と同時): ボス、あなたを誘拐で逮捕します! 理由はもちろんおわかりですね? あなたがPC1の幼なじみさんをさらい、邪神の生贄にしようとしたからです!

PC3(PC2と同時): (バラを投げながら)美しき華を奪い貪欲なる獣に捧げようとする貴様の悪行。タナトスの裁きが必要だ。大焦熱地獄の業火に焼かれよ!

ボス: ちょいちょいちょいちょい。んっと、んっと、なんて言おうかな……。

 ボス、反応に困っちゃいましたね。

 この事態、GM(KP)もPLも全く悪くありません。
 シナリオで「話題をバラす」工夫がされていないのが、一番の問題なのです。

 おそらくこのシナリオ、「PC1の幼なじみをさらった悪いヤツ」以外に話題がないんですよ。
 ボスに対して、しゃべりたいタイミングも内容も完全に丸かぶりなので、同じ言葉で同時にぶん殴る事態になっているわけです。

 では個別ハンドアウトで、こうしてあげればどうでしょう?

HO1:
 あなたには仲の良い幼なじみがいる。

HO2:
 あなたは刑事だ。最近起きている少女の連続殺人事件を追っている。

HO3:
 あなたは前世において古代ムー大陸の戦士として戦っていた。そのときに命を賭して封印した邪神を、生贄の儀式によって復活させようとするものがいる。

 事前にこのような個別ハンドアウトを渡すだけで、ボス対面時の会話は一気に様変わりします。

ボス: ついにここに辿りついたか、PCた……

PC1(かぶり気味に): ついに見つけたぞボス! オレの大事な幼なじみを誘拐しやがって! 許さない!!

PC2: それだけではありません。これまでに数多くの少女たちを生贄にしてきた罪、償いなさい!

PC3: 静かにバラをかまえています。(彼に、私の前世を語っても意味はあるまい。このまま邪神復活が阻止されれば十分だ)

 おおっ!
 グダグダ感が一気に改善しましたね!

 もう1つ、ボス対面時と同じくらい話題がダブりやすい場面があります。
 PCたちが出会い、合流するシーンです。

 こちらも、個別ハンドアウトで話題をバラしてあげれば、一気に状況が改善します。

PC1: 刑事さん、実はオレの幼なじみが行方不明になってしまって……。

PC2: なんですって。いま少女殺人事件が頻発しているの。彼女もその犠牲者の一人になってしまうかもしれない!

PC3: (突然現れて)それは邪神復活の儀式かもしれない。

PC1・PC2: え? なに? どゆこと?

PC3:信じずともいいさ。私も協力しよう。私を受け入れてくれれば、それでいい。

 いい感じで話題が噛み合ってくれましたね。
 正確には、「話題がバラけているから、話題の出すタイミングをPLが考えてくれている」のです。

まとめ

 というわけで今回は、

『個別ハンドアウトの役割と作成のコツ』

 について解説しました。

 今回は記事のコンパクトさを優先し、ハンドアウトの細かい作成技法よりも、大枠を説明することに重点を置いています。
 もし「ここが、実際作ってみるとうまくいかない!」みたいな方がいれば、ぜひTwitterPeingお問い合わせから一声ください。より詳しく説明する、かもしれません。

 それでは、明日もよいTRPGライフを。

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