皆様、今日も楽しいTRPGライフをお過ごしでしょうか?
GM(KP)の皆様も、PLの皆様も。
TRPGで遊んでいる時、こんな経験はありませんか?
- いま、私のPCの目の前で何が起こっているかわからない……。これって私だけ?
- しまった、PCたちが想定外の動きを始めたぞ。GM(KP)はどうすればいいんだ?
TRPGをやっていると、たまに起こるもの。
これ、「シーンの始めかたが悪いから」だって、知っていましたか?
そんなわけで今回は、GM歴25年のTRPGおじいちゃん・りょーさんが、
「シーンの始めかたと終わりかた」
について解説していきます。
先に結論をお伝えしておくと、ポイントは以下の2点だけです。
- 「どこで・いつ・何をする」を伝えてからシーンを始めよう!
- 「何をする」が、特に大事! 絶対ぬくな!
GM(KP)にとっても、PLにとっても役立つ記事になっています。ぜひ最後まで読んでいってください。
そもそも、シーンってなに?
見出し通りの疑問を持っている人もいるかと思うので、先に解説しておきます。
この記事でいうシーンというのは、以下のようなものです。
- セッションを細かく刻んだもの
- 物語の大事なところを切り取ったひとかたまり
- 映画・アニメ用語だと”シーン”そのもの。小説でいう”章”、ゲームだと”パート”とかにあたる
特に大きなポイントが2. です。これがいかに大事かを説明するため、昔話をさせてください。
大昔。TRPGおじいちゃんがTRPGを始めた、25年くらい前。
まだシーンという概念がなかった頃は、物語のすべての時系列をセッションで扱っていました。
例えば、PCの自宅がある街から、ゴブリンがいる村まで歩いている間とか。
例えば、町長の家の扉をノックして「怪しいものではありません。どうか話を聞かせてください」と下働きのメイドに伝えるプロセスとかです。
そうしていると、焚き火をしている最中に腕相撲を始めるPCや、メイドに萌えて口説き始めるPCとか出るものです。
ゲームのプレイ時間はダラダラと過ぎていました。
そしてある日、頭のいい人が気づきました。
「これ、かったるいな。うまくカットできないかな?」
こうして、「大事なところだけを”シーン”として扱い、どーでもいいところはカットする」という考え方が生まれたのです。
映画でもそうでしょ?
主人公が気絶したら、3秒後には目を開いたときの場面に飛ぶでしょ?
これが”シーンの切れ目”です。
気絶するまでで1シーン、目を覚ましたところから1シーンです。
CoCなどルールに記載されていないゲームでも、皆さんは”シーン”を自然に使っているはずです。
街を探索中に、被害者の家から警察署までの移動時間ってカットしますよね?
それは”シーン”を自然に使っていて、切れ目の部分をカットしているわけです。
どこで・いつ・がまず大事!
では、この”シーン”を始める上で、何が大事なのか。
それは、「どこで・いつ・何をする」を、始めるときにはっきりさせることです。
「どこで・いつ」がなぜ大事かは、ダメなシーンの始め方を見るとよくわかります。
ダメな例を挙げましょう。
プシュッ…… 細い小さな音が響き、ドサリと倒れる音がした。 タバコが1つ、ぽとりと落ちる。 「おまえ、タバコ嫌いだったよな。ざまぁみろ」 そう、死体に声をかけた。
この後にGM(KP)が言います。
「さて。キミはどうする?」
90%のひとは、GMに何も答えられないでしょう。
理由は簡単、「なにが起こっているか、さっぱりわからないから」です。
もう、ツッコミどころ満載ですよね?
今、誰がどこに立ってて、何があるんだよ?
周りはどんな風景なんだよ? 時刻は昼か? 夜か?
声をかけたのは誰なんだよ? PCか? NPCなのか? NPCならどんな顔なんだよ?
死体って何? なんで死んだの?
タバコはどっから来たんだ?
はい。ダメな理由はよくわかったので、良い始め方を同じ場面で説明しますね。
では、シーンを始めます。 場所は東京の裏通り。夜中です。 今回、あなたたちが逮捕すべき連続殺人犯が、一人目を殺すシーンです。 では、描写を始めます。
これを伝えてから上の描写を読むだけで、相当わかりやすくなった気がしませんか?
単純に。
導入と描写をセットにすれば、”裏通りで人が死んだ。話しているのは殺したやつだ”までは多くの人に伝わります。
加えて、これくらいを読み取れる人が出てくるでしょう。(読み取れない人もいます)
- ”プシュッ”という音で相手が即死したなら、殺した凶器はサプレッサー付き拳銃じゃないか?
- 殺人犯と被害者のシーンなんだから、タバコを捨てたのは殺人犯だろう
- 殺した相手の趣味嗜好を知っている以上、殺人犯は被害者と親しいな
- 「さて、キミはどうする?」と俺に聞く以上、俺のPCはここを目撃しているんだな
一気に、情景が細かくなりましたよね?
改めて理解して欲しいのですが、「プシュッ」から始まる詩的文章の文字数が80文字。「では、シーンを始めます」の説明文が71文字です。
文字数を2倍にしただけで、とんでもなく情報の量が増えたのがわかりますでしょうか?
わかってくれぇ。
なにをするか? も超大事!!
ここからは、「なにをするか?」が特に大事、と言う話です。
前の章では、こう言いました。
今回、あなたたちが逮捕すべき連続殺人犯が、一人目を殺すシーンです。
ここで、大事な情報をたくさん伝えています。
ちょっと砕いて書いてみましょう。標準的なPLなら、これくらい察してくれます。
- 連続殺人犯が一人目を殺すシーンか。じゃあ、このシーンのあとにコイツは複数の人を殺すんだな
- であれば、ここでコイツを捕まえてしまうと、あとの流れと辻褄が合わなくなるよな。やめておこう
- それはそれとして、このシーンは二人目以降の殺人に対する大事な例になるだろう。GMから追加描写がなければ、同じ感じで被害者は殺されるんだろうな
もし察してくれなかったとしても、修正は簡単です。
例えば「私のPCは殺人犯のドタマを、持っている拳銃でカチワリます」とPLに言われたとします。
それでも、GMは冷静に対処できます。
「冒頭で言った通り、このシーンは連続殺人犯が一人目を殺すシーンだから、ドタマカチワラれるとシナリオ崩壊だ。 拳銃を撃つのはいいが、カチワれなくてもいいかい?」
GM(KP)にとって譲れない場所がわかるからこそ、このような相談ができるわけです。
PLとしても、拳銃を撃つことさえできればドタマカチワれなくても許せるのでは?
繰り返しますが、これはとてもすばらしいことです。話し合うきっかけがあるわけですから。
短く終わるためにも”何をする”は大事!
”何をする”が大事な理由は、もうひとつあります。
「シーンが終わる条件」がはっきりすることです。
さっきの例だと、描写が終わった時点で「連続殺人犯が、一人目を殺す」部分は終わっています。
なので、このシーンはいつでも終われるわけです。
そのうえでGM(KP)から「どうする?」と聞かれているので、PCが取るアクションは消極的なもので十分でしょう。
悲鳴をあげる、大通りに逃げ出して人を呼ぶ、スマホで警察に電話する、こういった行動をGM(KP)は期待している可能性が高いです。
もちろん、「俺のPCは、男を取り押さえようとするぞ」というアクションをとってもいいです。
しかし、それがうまくいかないだろうことは受け入れたほうがよいです。
なぜならこのシーンは「連続殺人犯が、一人目を殺す」シーンです。ここで殺人犯が捕まったら、それこそ”なにをする”の部分がぶっ壊れてしまいます。
こんな感じでPLに着地点を意識してもらえるので、GM(KP)がセッションの手綱をとるのも簡単になります。
着地したらすぐシーンを終われるので、セッション時間も短くすみます。
セッション時間を短くしたほうがいいことは、以前にお伝えしましたね?
「自分はGM(KP)やるの、苦手だなあ」
「どうしてもセッションが長くなるんだよなあ」
そんなふうに思っている人こそ、ぜひ実践していただきたいテクニックです。
PLから言ってもいいんだよ!
ここまでの、「どこで・いつ・何をする」の話。
GM(KP)が言うのがベストではあるのですが。
彼らだって人間です。こんな、おじいちゃんが書いているブログなんて、知る由もないかもしれません。
つまり、GM(KP)が「どこで・いつ・何をする」を説明せずに、シーンを始めちゃうときもあるのです。
そんなときは、PLから聞いてみましょう。
「へいGM(KP)。ここはどこで、いつで、何をするんだい?」
それだけで、GM(KP)に伝わることがあります。
「あ、コイツには状況がわかってないだな」って。
それが伝わることは、とても当たり前で、とても大事なことで、恥ずかしいことではありません。
たまに、「何をする」をできるだけ隠そうとするGM(KP)はいます。
それは仕方ありません。私は賛成しませんが(ここまで説明した通り、膨大な情報を隠すことになるからです)、GM(KP)の気持ちもわかります。
そういうときはなおさら、GM(KP)に「いつ・どこで」を細かく聞くようにしましょう。情報を隠しているのはGM(KP)の側ですから、仕方ないことです。
まとめ
そんなわけで。今回は、
「シーンの始めかた」
について解説しました。
そして。シーンの始まりがあれば、終わりがあります。
次回の知恵袋では、以下のリンク先で「シーンの終わり方」について解説していきます。ぜひお楽しみに。

それでは、明日もよいTRPGライフを。
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